うつ病は身体から治さないと治りませんよ 五臓と精神、感情の関係を解説します
はじめに
うつ病患者が年々増加しています。1999年 に44万人の患者数が2014年には112万人になりました。この15 年間で約2.5 倍に増加しているのです。
病院に行ってうつ病と診断されると、<気持ちが落ち込んでいるのだから、高揚させれば良いのだ>と言う考えのもとに、興奮薬が処方されます。うつ病を脳と自律神経の病気だと思っているのです。
多くの人が、薬を飲み続けてもなかなか良くならずに困っています。お医者さんは、<この薬を飲めば、いつ頃治りますよ>とは決して言いません。何故なら、お医者さんは、薬で治らないことを良く分かっているからです。
日本の今の医療制度の下では、治る、治らないはあまり関係無いのです。薬を出していればそれで医療が成立してしまうからです。
患者さんにしてみれば、病院に行くと薬が出るので<これを飲んでいたらそのうちに治るのかな>という思いで薬を飲み続けるのです。
この様ないわば、患者さん側の一方的な誤解に基づいて、医者とうつ病患者の不毛の関係が続いてしまっているのです。これが今の日本の困った現実です。
西洋医学は人間の体を細分化していき、それぞれ専門化する事によって、病気に上手く対応出来るとしています。従って、うつ病を脳や自律神経の病気として扱っています。しかし、細分化、専門化すればする程、全体が見えなくなって、症状抑えの対症療法になってしまうのです。そこに西洋医学の大きな欠陥があるのです。
鍼灸医学は人間を全体として捉えます。精神と肉体とが一体になっているとするのです。うつ病を体の部分的な病気とせず、内臓が精神と感情に大きな影響を及ぼした結果とするのです。
うつ病を理解するには内臓と精神、感情の関係を良く理解する必要が有ります。特に五臓(肝、心、膵、肺、腎)の働きと密接な関係が有ります。
ここでは、五行の配当表の中の五精と五志を用いて、易と鍼灸医学を融合させた【私の鍼灸医学】で内臓と精神、感情の関係を解説します。体から治さないと良くならないという、うつ病の根本が分ってきます。
◆五臓と五精、五志
鍼灸医学ではいわゆる五臓六腑の内の五臓を特に重要視します。肝臓、心臓、膵臓、肺臓、腎臓が五臓です。
五臓と精神との関わりを知るには五精を
五臓と感情との関わりを知るには五志を
それぞれ理解すると大変分かり易いのです。
うつ病と診断されていない人にとっても有用で、日常生活に役立てる事ができます。
以下、五精と五志を解説します。
◆五精とは
肝臓には魂、心臓には神、膵臓には意と智、肺臓には魄、腎臓には精と志がそれぞれ配当されます。五臓と精神が密接に結びついているのです。
・肝臓と魂
魂とは体内にあって肉体や精神を司る人格的な存在です。肉体から離れ たり、死後も存続する事が出来る不滅な陽のエネルギーです。
魂はそれが否定されると生きていけなくなる程大事なものなのです。大きなストレスがかかったり、肉類の過剰摂取などで肝臓が弱ると魂も弱まります。すると生きるのがつらくなってくるのです。
・心臓と神
神とは全ての生命活動をコントロールしているエネルギーです。
例えば鍼灸医学では、目が健全であれば、目に神が有ると表現したりします。大きなストレスがかかり心臓がドキドキするだけでも体全体の機能低下を招くのです。
・膵臓と意、智
意と智とは気持ちや考えを上手くまとめる賢さを意味します。従って、大きなストレスがかかったり、肉類、脂肪の過剰摂取、過食などで膵臓の働きが弱ると、良い考えが浮かばなくなってきます。
・肺臓と魄
魂の陽に対して魄は肉体を形成する陰のエネルギーです。強く息を吐くことによって増強します。強いストレス、運動不足、辛い物の過剰摂取などで肺が弱ると ガス交換も上手くいかず、言葉にも力が無くなり体が弱ってきます。
・腎臓と精、志
精とは人間が生きる上の物質的基礎になるもので腎臓に蓄えられています。この精を全身に配り、健全な働きを維持しています。精が十分あって志が立つのです。大きなストレスがかかったり、過労などにより腎臓が弱ると、体力が低下し、やる気、根気が低下し、不眠症になったりするのです。
◆五志とは
肝臓には怒、心臓には喜 (笑う)、膵臓には思 ( 慮 )、肺臓には悲(憂)腎臓には恐(驚)がそれぞれ配当されます。
五臓と感情が以下の様に密接に結びついているのです。
・肝臓と怒
肝臓はのびのびとした状態を好む臓器です。物事が自分の思うようにいかないと肝気がうっ滞し怒りとなります。怒ると肝臓の働きが低下します。大きなストレスがかかったり、肉類、脂肪の過剰摂取が加わると、 肝臓の働きが益々低下し、ちょっとしたことでもすぐ怒るようになり、悪循環に陥ります。
・心臓と喜(笑)
喜びや笑いが過ぎると心臓が弱くなります。心臓が弱ると、ちょっとしたことでもすぐ喜んだり笑ったりしてしまいます。興奮して集中できなくなったり、不眠症になったりします。
・膵臓と思( 慮 )
思慮が過ぎると気が結んでしまい膵臓が弱ります。膵臓が弱ると消化吸収能力が低下し、体力が落ちて動悸がしたり、健忘、不眠などにもつながります。肉類、脂肪の過剰摂取や過食などで膵臓が弱くなると、考えがまとまらなくなり、悪循環に陥ります。
・肺臓と悲( 憂 )
悲しみ憂い過ぎると肺気を消耗し肺が弱くなります。呼吸が浅くなり、言葉も弱々しくなります。辛い物を摂り過ぎたりして、 肺が弱るとちょっとしたことでも悲しく憂いて、意気消沈してしまい悪循環に陥ります。
・腎臓と恐( 驚 )
大きなストレスなどがあり、恐れや驚きが過ぎると腎臓が弱ります。腎精が減少してしまいますから、ちょっとしたことにも恐れたり驚き易くなります。やる気、根気も無くなってきます。過労や肉類、脂肪の過剰摂取により腎臓が弱ると悪循環に陥ります。
まとめ
◆五精と五志を理解すると五臓(肝、心、膵、肺、腎)と精神、感情との間に
は密接な関係がある事が分かる。
◆ストレス、過労、食事に注意し、精神、感情を上手くコントロールすると、うつ病の
予防と治療になる