健康な人は <頭涼足温> いわゆる<頭寒足熱>は、意味不明!
はじめに
<頭寒足熱(ずかんそくねつ)>という言葉は、多くの人が見聞きしている言葉でしょう。冷えのぼせ、で困っている人達にとっては、健康な体の状態を現す、大変、大事な言葉として受け止められていると思います。
ところが、この<頭寒足熱>という言葉は、鍼灸医学の生理、病理を正しく理解すると、どうにも意味不明な言葉なのです。残念ながら、鍼灸医学を良く知らない人が作り出してしまった言葉のようなのです。
<頭寒足熱>という言葉の意味については、さまざまな解釈がなされています。しかし、なるほど納得!と思えるような解釈は一つも有りません。意味不明な言葉に正しい解釈を加えるということそのものが、あまり意味のないことなのです。
足の冷えは辛いです。足の冷えは誰もが強く意識します。しかし、自分の頭(額)が冷たいのか,熱いのか、汗が出ているのか、額に手を当てて調べてみる人は、意外に少ないのです。頭の熱は、足の冷えほどには意識されていません。
上下にかき混ぜないお風呂は、上が熱くなり、下が冷たくなります。不快で、とても入れるものではありません。上下を良くかき混ぜ、全体が均一な温度になって、初めて、お風呂としての健全な機能を発揮することが出来るのです。
人は内臓が働くことによって生きています。内臓が働くと必ず活動熱が発生します。
熱は上昇し、冷は下降すします。内臓の活動熱は、放っておくと頭に上昇します。それに伴い、冷は足に下降します。
人も自然と同じです。上下を良くかき混ぜないと 、頭が熱くなり、足が冷たくなってしまいます。すると、健康な状態を維持する事が出来なくなってしまうのです。
人が健康に生きる為には、上昇する活動熱を下降させ、下降する冷を上昇させ、上下を良くかき混ぜ、身体全体を均一な温度に保つ必要があります。上下をかき混ぜる、 この大事な働きを、鍼灸医学では腎臓がしているとするのです。
・一般に言われている<頭寒足熱>という言葉が、意味不明であること、
・足の冷えの原因が、冷えではなく、内臓の熱であること、また、
・ 人が健康に生きる為には<頭涼足温>状態でなければならない、
ということを解説します。
陽論とは
陰陽論とは易の基本思想の一つで、人間の生理、病理を理解する上で大変有用です。全ての物に正反対の性質を持った陰と陽が有ります。陰と陽は互いに引き合い調和しようとします。
一方、陰と陰、陽と陽は互いに反発しあい調和しようとしません。磁石のS極とǸ極をイメージすると分かり易いです。同じ極は反発しあい、異なる極は引き合うのと一緒です。
◆エネルギー(気)に陰陽がある
陰のエネルギー(陰気)は、冷却する、鎮める、下降する、という性質があります。
陽のエネルギー(陽気)は、加熱する、活発にする、上昇する、という性質がありま
す。
◆脳は体の司令塔、各内臓に指令を出している。
脳は、呼吸器系、循環器系、消化器系、自律神経系、ホルモン系、その他、多くの系統に指令を出しています。
◆内臓が脳を養う。
脳は各内臓によって養われています。つまり、脳と各内臓は協力関係にあるのです。
鍼灸医学では、「腎は髄を生じ、脳を満たす」とします。特に腎臓は脳を健全な状態に保つ大事な働きをしています。
◆内臓のエネルギーにも陰陽がある
夫々の内臓にも陰気と陽気があり、陰陽のバランスをとろうとしています。
◆熱にも陰陽があり、陰の熱を虚熱、陽の熱を実熱と呼ぶ
陽気が多く、陰気が少ないと、温度が高くなります。これを実熱と呼びます。
陽気が少なくても、陰気が極端に少ないと、温度は高くなってしまいます。これを虚熱と呼びます。
◆内臓が働くと活動熱(陽気)が増大し、上昇する。
陽気は上昇し、実熱となります。
◆上昇する活動熱( 陽気)を下降させるのは腎臓の陰気
腎臓の陰気は特に大事です。
◆弱った内臓が無理に働くと陰気が陽気を抑えきれずに陽気過剰になる。
次第に、不健康な状態になっていくのです。
◆腎臓が弱ると腎臓の陰気が減少し、各臓器の過剰な陽気を抑えきれなくなり、頭部には実熱、足には虚熱が発生する。
・頭部には陰気より陽気の多い、実熱が発生します。
・足は陽気が少ないのにもかかわらず、腎臓の陰気が極端に少なくなると、虚熱が発生します。
◆熱の発散方式にも陰陽がある。
汗を出して熱を発散する、陰の発散と、ほてらして熱を発散する、陽の発散があります。
健康状態を良くする為、頭部の実熱と足の虚熱を以下の様に発散しようとします。
◆頭部の実熱を以下の様に発散します。
・ほてらしす陽の発散
額を触ると熱く感じます。腎臓に余力が無く、汗を出したくても、出せないでいる可能性があります。
・汗を出す陰の発散
陽の発散より強力です。 額を触ると冷たく感じます。表面は冷たくても、脳には過剰な熱があります。
◆足の虚熱を以下の様に発散します。
・ほてらす陽の発散 (陽気の多い体質の人の発散方法)
触ると熱く感じます。腎臓に余力が無く、汗を出したくても、出せないでいる可能性が有ります。ひどくなると寝付けなくなります。
・汗を出す陰の発散 (陽気の少ない体質の人の発散方法)
陽の発散より強力です 。触ると冷たく感じます。汗が出ていないように見える場合でも、わずかに湿っています。
冷えると毛細血管が縮まってしまい、血液循環が低下し、益々冷えてきます。冷えはとても辛いものです。気力も低下し、ひどくなると寝つきも悪くなります。
◆<頭寒足熱>は意味不明
・生きている限り内臓の熱は頭に上がってきます。従って、頭の中が冷たく寒くなると言うことは無いのです。
額を触って冷たければ、脳に実熱があり、汗を出す陰の発散をしている状態です。頭は過熱していますから、不健康な状態です。
従って、<頭寒>が何を意味するのか、全く意味不明です。
・足が熱ければ、足に虚熱 があり、ほてらす陽の発散をしています。腎臓に余力が無く、汗を出したくても、出せないでいる可能性があります。 不健康な状態です。
従って、<足熱>が何を意味するのか、全く意味不明です。
◆健康な人は<頭涼足温>
内臓が良い状態で、無理なく働いていれば、過剰な活動熱は発生しません。
頭に過剰な熱が上がってこなければ、実熱は発生しません。額は熱くもなく、冷たくもなく、ほてらず、汗も出ず、涼しい状態になります。
一方、頭に過剰な熱が上がってこなければ、足に虚熱も発生しません。足は、ほてらず、冷えず、汗も出ず、温かい状態になります。
従って、健康な人は<頭涼足温>なのです。
あとがき
◆冷えの原因は熱!
足の冷えで困っている人は、大勢います。ほとんどの人が、<冷えの原因は冷えだ>と思い込んでいます。ところがこのブログを読んでいただけば、それが間違いであることがわかります。<冷えの原因は熱!>なのです。
足の冷えは、<顔面、頭部ののぼせ>と対をなしています。足が冷える人は、いわゆる<冷えのぼせ状態>となっているのです。その原因は、弱った内臓が無理して働く時に発生する過剰な活動熱なのです。
◆温め過ぎるとかえって悪化する。
ほとんどの人が、温めると冷えは良くなると思っています。ところが、内臓の過剰な活動熱が原因なのですから、身体に熱を入れ過ぎると、かえって冷えは悪化するのです。
・ お風呂で十分温まる
・コタツで十分温まる
・足湯で十分温める
良いと思ってするこれらのことで、身体に入ってくる過剰な熱は、腎臓にとっては大変困った熱なのです。
一時的に冷えが楽になっても、これらの熱は腎臓の陰気を損なうので、冷えるという体質が、かえって悪化します。 ある程度温まったら、そこで止めにしてそれ以上熱を入れない、ということがコツなのです。
◆過剰な活動熱の発散法にはさまざまな方法があり、より複雑
本ブログでは、腎臓の、汗を出す陰の発散と、ほてらす陽の発散について解説しました。熱の発散方法については他にも様々なものが有り、そのメカニズムは複雑です。機会があれば、それらについても触れたいと思います。
◆冷えのぼせを改善するのは内臓(特に腎臓)の働きを良くすることが大事。
・ 内臓に無理をかけないで、働きを良くし、過剰な活動熱を発生させない。
・腎臓の働きを良くして、陰気が増加する様な体質改善を図ることが特に大事です。
下記、ブログなどを参照して頂くと、より分かり易いと思います。