<過敏性腸症候群>でお困りのあなたに、本当の原因とメカニズムを解説します。
はじめに
何らかのストレスがかかった時に、<下痢をするのではないか>という不安と恐怖に襲われにわかに腹痛と下痢を起こしてしまう病気です。同じようなストレスがかかった時に<また、下痢するのではないか>という不安と恐怖に襲われ、また、腹痛と下痢を起こしてしまいます。困ったことに、これを繰り返すようになってしまうのです。
以前は<過敏性大腸炎>と言われていた病気です。しかし、最近は、小腸を含めた腸全体に機能異常があることが分かってきた、ということで、<過敏性腸症候群>と呼ばれるようになりました。
簡単にトイレに行けないような状況(通勤電車の中や会議中など)の時に起こりますから、仕事に、生活に、大きな支障が出てきます。しかし、どういう訳か下痢をしてしまえば、不思議に、とりあえず、治まってしまうのです。 ストレスがかからない時に腹痛と下痢が起こると言うことは無いのです。
<過敏性腸症候群>は若い人 (20~40代) に多く、日本人の15~20%に、この症状が見られるとされています。腹痛、下痢を起こすだけでなく、ガスが多かったり、下痢と便秘を繰り返したりする場合もあります。
西洋医学では、病気の憎悪因子としてストレス、不規則な生活、睡眠不足、疲労の蓄積、などを挙げていますが、原因は不明とされています。
治療としては、消化器内科や心療内科で症状抑えの薬物治療を行いながら、ライフスタイルや生活環境の改善をはかる、と言う方法が主流になっているようです。
<過敏性腸症候群>には下記のような、いくつかの何故?があります。
・何故? ストレスがかかると不安や恐怖に襲われるのか。
・何故? 不安や恐怖に襲われると<下痢をするのではないか>という気持ちになるのか。
・何故? 下痢をしてしまえば、とりあえず、下痢は治まってしまうのか。
・何故? 下痢をしてしまえば、とりあえず、不安や恐怖は消えてしまうのか。
・何故? 同じようなストレスがかかると、また不安や恐怖に襲われ、下痢を繰り返すのか。
・何故? 寝ている時は下痢しないのか。
・何故? ガスが多かったりするのか。
・何故? 下痢と便秘を繰り返す場合があるのか。
・何故? 若い人(20~40代)に多いのか
これらの、何故?が分かると<過敏性腸症候群>がどのような病気なのか理解することが出来ます。
易の陰陽五行論と鍼灸医学を融合させた【私の鍼灸医学】で<過敏性腸症候群>の発生メカニズムを解説します。本当の原因、予防法、食事法が分かってきます。
◆陰陽論とは
陰陽論とは易の基本思想の一つで、人間の生理、病理を理解する上で大変有用です。全ての物に正反対の性質を持った陰と陽が有ります。陰と陽は互いに引き合い調和しようとします。
一方、陰と陰、陽と陽は互いに反発しあい調和しようとしません。磁石のS極とǸ極をイメージすると分かり易いです。同じ極は反発しあい、異なる極は引き合うのと一緒です。
◆五行論とは(ごく簡単な解説に留めます)
易の基本思想の一つで、全ての物が<木、火、土、金、水>の五つの要素 により成り立ち、それぞれの要素が互いに相生、相克という影響を与えるとする考えです。
・相手の要素を補い強める影響を与えるものを相生と言い、 木は火を生じ、火は土を生じ、土は金を生じ、金は水を生じ、水は木を生ずるとします.
・ 相手の要素を抑え弱める影響を与えるものを相克と言い、木は土に勝ち、火は金に勝ち、土は水に勝ち、金は木に勝ち、水は火に勝つとします。
五臓、五腑が下記の如く五行に配当されます。
肝,胆は 木
心、小腸は 火
膵(すい)、胃は 土
肺、大腸は 金
腎、膀胱は 水
以下、【私の鍼灸医学】で腎臓、心臓、小腸、大腸の基本的生理、病理を解説します。
◆腎臓は精を、心臓は神を貯蔵する。
鍼灸医学では、 五臓(肝、心、膵、肺、腎)は 月(にくづき)に蔵と書くように、臓の中に大切な何かを貯蔵しているとします。
腎は<精>を蔵すといいます。腎臓は<精>を貯蔵しているとするのです。
心は<神>を蔵すといいます。心臓は<神>を貯蔵しているとするのです。
つまり、<精神>という言葉は、腎臓と心臓が、その中に貯蔵している、<精>と<神>を組み合わせて出来た言葉なのです。
◆腎精が精神、肉体、エネルギーのおおもと。
両親から頂いた先天の腎精と、飲食物と大気から作り出される後天の腎精の二つが合わさり、腎精を形成し、精神、肉体、エネルギーのおおもとになります。
◆腎精から腎陰と腎陽が生まれる。
それぞれの働きを下記します。
・腎陰
精神、肉体>を安定、沈静化するエネルギーです。副交感神経を活性化します。腎陰が不足すると精神、肉体が不安定になり、沈静化しなくなります。躁病やパニック障害が典型的な病気です。
・腎陽
精神、肉体>を活性化するエネルギーです。交感神経を活性化します。腎陽が不足すると精神、肉体が不活発になります。うつ病が典型的な病気です。
◆<神>は腎精より生み出され、人の精神、肉体、エネルギーを統括(コントロール)する。
心臓に貯蔵する神は腎精より生み出されます。そして精神、肉体、エネルギーを以下のように統括(コントロール)します。
・神は脳を通じて精神、肉体、エネルギーを統括(コントロール)する。
神が不足すると、精神、肉体、エネルギーをコントロール出来なくなります。
神が極端に不足すると、精神、肉体、エネルギーがコントロール不能となり、人として機能しなくなってしまいます。
◆腎精から心陰、心陽が生み出される。
それぞれの働きを下記します。
・心陰は、心臓を安定、沈静化するエネルギーです。副交感神経を活性化します。
・心陽は、心臓を活性化するエネルギーです。交感神経を活性化します。
◆心陰が十分あれば心陰、心陽のバランスが取れ、心臓は神を十分を貯蔵できる。
神が十分貯蔵出来ていれば。精神、肉体、エネルギーは良くコントロールされ健康な状態を保てます。
以下に、 <過敏性腸症候群>発症のメカニズムを解説します。
◆下痢は体を守る為にある。
下痢は胃腸の中にある有害な物を排出して、命を守る為に有ります。
◆下痢には陰性の下痢と陽性の下痢の二種類が有る。
細菌性の下痢を除き、下痢には以下の二種類が有ります。
・陰性の下痢
冷たい飲食物を摂り過ぎたり、お腹を冷やした時にする下痢です。
・陽性の下痢
何らかの原因で胃腸の中に発生した、過剰な熱を排出する為の下痢です。<過敏性腸症候群>の下痢がこれに相当します。
◆腎臓、心臓が弱っている人に、ストレスがかかると、腎陰、心陰が減少し、神が減少する。
人は、腎陰、心陰でストレスに耐えるのです。従って、ストレスがかかると腎陰、心陰を消耗します。
腎陰、心陰が減少すると、心陽が過剰になり心陰と心陽のバランスが崩れ、心臓が過熱します。その結果、神が減少し精神、肉体、エネルギーを良くコントロール出来なくなります。神が減少すると、不安と恐怖に襲われます。
◆減少した<神>を元に戻すために、過剰な心陽を経絡を通じて小腸に逃がす。
心臓と小腸は経絡でつながっています。心臓を守る為、過剰な心陽を経絡を通じて小腸に逃がし、心陰と心陽のバランスを取ろうとするのです。 心陰と心陽のバランスを取って、減少した神を増やし、元に戻そうとするのです。
◆小腸に蓄積した過剰な心陽を下痢することによって体外に排出しようとする。しかし
小腸に蓄積した過剰な心陽を下痢として排出しようとしても、大腸に便があるので、簡単に体外に排出する事が出来ません。そこで、先に、大腸に下痢を起こさせるのです。
◆小腸は五行論の相克の関係を利用 (火は金に勝つ)し、先に、大腸に下痢を起こさせ
る。
小腸は大腸に勝つのです。 従って、過剰な小腸の熱で大腸を克して、先に、大腸に下痢をさせるのです。
◆先に大腸が下痢してくれると、 小腸の過剰な熱は、下痢として容易に排出できる。
大腸に問題があって大腸の下痢が起こるのでは無いのです。小腸が容易に下痢できるよう、大腸は小腸に尅されて、大腸の下痢が先に起こるのです。
<過敏性腸症候群>の何故?について、以下、解説しまます。
・何故? ストレスがかかると不安や恐怖に襲われるのか。
腎臓の働きと、不安、恐怖、驚き、は密接な関係が有ります。生まれつき腎臓の弱い人は不安や恐怖に襲われ易いのです。
人は、腎陰、心陰でストレスに耐えるのです。従って、ストレスがかかると腎陰、心陰を消耗するのです。腎陰、心陰が減少して、不安や恐怖に襲われるのです。
・何故? 不安や恐怖に襲われると<下痢をするのではないか>という気持ちになるのか。
腎陰、心陰が減少すると、心陽が過剰となり、神が減少します。すると精神、肉体、エネルギーをコントロール出来なくなります。
下痢をすることにより、心臓と小腸の過剰な熱を発散し、減少した神を増やし、元に戻そうとするのです。
精神、肉体、エネルギーをコントロール出来るようにする為には、とりあえず、下痢する以外に上手い方法が無いのです。従って、<下痢をするのではないか>という気持が起こってくるのです。
・何故? 下痢をしてしまえば、とりあえず、下痢は治まってしまうのか。
心臓と小腸の過剰な熱を発散出来、減少した神が元に戻れば、とりあえず、精神、肉体>、エネルギーをコントロール出来るようになるからです。
・何故? 下痢をしてしまえば、とりあえず、不安や恐怖は消えてしまうのか。
過剰な熱を発散できれば、減少した腎陰と神は増加し、元に戻ります。すると不安や恐怖は、とりあえず、消えてしまうのです。
・何故? 同じようなストレスがかかると、又、不安や恐怖に襲われ、下痢を繰り返すのか。
<過敏性腸症候群>の人は、腎臓、心臓の弱りが、生まれつきあるのです。従って、腎陰と神が、いつも、ある程度不足した状態でいるからです。
・何故? 寝ている時は下痢しないのか。
寝ている時、腎陰は増加し、腎陽は減少しています。従って、心臓、小腸に過剰な熱は発生しないからです。
・何故? ガスが多かったりするのか。
膵臓が弱ると消化液が不足し、不完全発酵するのでガスが多くなります。すい臓の弱りが原因になる下痢もありますが、<過敏性腸症候群>とは直接の関係は有りません。
・何故? 下痢と便秘を繰り返す場合があるのか。
小腸に熱があれば、胃と大腸にも熱があります。大腸に熱があると便秘します。従って、下痢していないときは、便秘がちになるのです。
・何故? 若い人(20~40代)に多いのか
若い人は陽気が盛んです。腎陽、心陽が十分あるだけに心臓、小腸に過剰な熱が発生し易いのです。
あとがき
易の陰陽五行論と鍼灸医学を融合させた【私の鍼灸医学】によれば、以上のように<過敏性腸症候群>を良く理解する事が出来ます。原因は腎臓と心臓の弱りであって、腸が原因では無いのです。
<過敏性腸症候群>は生まれつき腎臓、心臓の弱い人がかかり易い病気です。ストレスは腎臓、心臓に負担を掛けます。ストレスにより腎陰、心陰と神が減少し、過剰な熱が発生すると、精神、肉体、エネルギーをコントロール出来なくなってしまうのです。
減少した腎陰、心陰と神を増やし、元に戻せば、精神、肉体、エネルギーをコントロール出来るようになります。その為、心臓の 過剰な熱を、経絡を通じて小腸に移し、下痢で体外に排出しようとするのです。
小腸で下痢する為には、大腸内の便が邪魔になります。従って、容易に下痢できるよう、小腸は大腸を尅して(五行論の火克金)、先に、大腸に下痢をさせるのです。
小腸、大腸に起こる下痢は<過敏性腸症候群>の原因ではありません。腎臓と心臓の弱った結果、発生した症状なのです。
とりあえず、小腸と大腸で下痢をして、命を守ろうとしているのです。 痛くてつらいですが、命を守る為には、止むを得ないのです。
西洋医学は、原因が、目に見えないエネルギーの世界にあると言うことに、一向に気が付きません。どういう訳か、目に見える物質の世界にしか目がいかないのです。原因らしきものが見つからなければ<原因不明>としてしまい、 それで終いです。
西洋医学の<悲しいまでの幼児性と独善性>がここにもあるのです。残念かつ不幸なことです。
<過敏性腸症候群>は腸の病気ではなく内臓、特に腎臓と心臓の病気であることを理解する必要があります。従って、 西洋医学の薬物治療では根本的に良くならないことを良く認識しなければなりません。
腎臓、心臓の働きを良くする為、仕事も含め、日常生活を見直し、改善する必要があります。
ストレス、過労、睡眠不足に注意し、適度な運動をするように心がけるのも良いことです。
腸に直接的に影響するだけに、飲食の注意は特に大事です。それらを下記します。
・辛い味の食品を控える(胃腸の粘膜が過熱し、下痢がひどくなります)
・熱い物を控える(胃腸の粘膜が過熱し、下痢がひどくなります)
・肉類を摂り過ぎない
・脂肪を摂り過ぎない
洋菓子、スナック菓子、菓子パン、チーズ、マヨネーズ、ピーナッツ、かりんとう、おかき、など
・タンパク質(肉類、豆類)を摂り過ぎない
・体質、季節に合った野菜を十分摂取する
・食物繊維を含む食品を十分摂取する
・アルコールは控えめに
・過食しない
・間食は出来るだけ控える。
・良く噛む
精神と腎臓、心臓の関係については、下記ブログを参照して頂くと、より分かり易いです。