<急増する卵巣嚢腫>その発生メカニズム 易の陰陽論で解説します 原因と改善法が分かります
はじめに
卵巣はクルミ程の大きさの臓器で、太さ約1センチのじん帯で子宮と繋れています。<卵巣嚢腫(らんそうのうしゅ)>とは、卵巣に出来た良性腫瘍で、卵巣に出来る腫瘍全体の8~9割を占める(残りは卵巣がん)と言われています。その<卵巣嚢腫>が特に若い人に急増しているのです。
<卵巣嚢腫>は卵巣の出口が塞がれてしまい、中に液体が溜まり膨らんでしまう病気です。直径8~10㎝の大きさになるまでは、ほぼ無症状です。その為、発見が遅くなりがちです。時には、直径20センチ以上に巨大化する場合もあります。
嚢腫の大きさが5~6㎝以上になると、じん帯が捻じれる茎捻転(けいねんてん)を起こすことがあり、その場合は、緊急手術が必要になります。
原因として、西洋医学ではストレスや食事の欧米化などが挙げられていますが、詳しくは不明とされています。
易と鍼灸医学を融合させた【私の鍼灸医学】で<卵巣嚢種>の発生メカニズムを解説します。<卵巣嚢種>の原因が腎臓と肝臓の弱りにあること、また、その改善法も分かります。
以下、<卵巣嚢腫>の種類、症状、治療について簡単に解説します。
◆<卵巣嚢腫>の種類
卵巣嚢腫は卵巣の中に溜まる液体の違いによって以下の三種類に分けられます。
<皮様(ひよう)嚢腫><成熟嚢胞性奇形腫>
直径10㎝未満の小さめの嚢腫です 。まだ受精していないのにもかかわらず、中に脂肪のかたまり、毛髪の束、骨、歯などが出来てしまうのです。左右両方の卵巣に同時に発生する事もあります。20~30代の若い人に特に多く、妊娠中に発見されることもあります。
<漿液性(しょうえきせい)嚢腫>
黄色透明の水様液が溜まり、球形の握りこぶし大の大きさになります。<卵巣嚢腫>の中でも最も頻度の高い腫瘍です。
<粘液性(ねんえきせい)嚢腫>
ネバネバした粘液性の液体が溜まり、かなり大きな嚢腫になる傾向があります。 まれに、高齢者で、自然破裂を起こし、腹腔内に粘液が散乱することが有ります。
◆<卵巣嚢腫>の症状
下腹部の膨満感、下腹部や片側下腹部の痛み、下腹部の急激な激しい痛み、便秘、頻尿、性器からの出血、閉経しているのに出血する、など。
◆<卵巣嚢腫>の治療
特に有効な薬は有りません。嚢腫が小さい(5㎝未満)場合は経過観察になります。大きい(5㎝以上)場合は、症状や、腫瘍の大きさ、種類、年齢、妊娠や出産経験、今後出産を希望するかどうか、などの状況を判断して手術するかどうか決められます。
◆陰陽論とは
陰陽論とは易の基本思想の一つで、人間の生理、病理を理解する上で大変有用です。全ての物に正反対の性質を持った陰と陽があります。全ての物は、陰と陽を調和させることによって成り立っています。陰と陽は互いに引き合い調和しようとします。
一方、陰と陰、陽と陽は互いに反発しあい調和しようとしません。磁石のS極とǸ極をイメージすると分かり易いです。同じ極は反発しあい、異なる極は引き合うのと一緒です。
◆腎精が人の精神、肉体、エネルギーのおおもと
鍼灸医学では、<腎臓は精を蔵す>と言います。精を腎臓の中に蓄えているとするのです。それを腎精と呼びます。両親から頂いた先天の腎精と、飲食物と大気から作り出される後天の腎精の二つが合わさり、腎精が形成されます。その腎精が人の精神、肉体、エネルギーのおおもとになるのです。
◆エネルギーに陰陽があ
腎臓が蓄えている腎精から、陰のエネルギーの腎陰と、陽のエネルギーの腎陽の二つが生まれます。
・腎陰は、冷却する、鎮める、膨張する、緩む、伸びる、取り込む、物質(細胞など)を生み出す、副交感神経を活性化する、などの性質があります。
・腎陽は、加熱する、活発にする、収縮する、縮む、排出する、交感神経を活性化する、などの性質があります。
以下、腎臓の弱りが原因で出来る<卵巣嚢腫>発生メカニズムを解説します
◆卵子を成熟させるのは腎陰
物質(細胞など)を生み出すのは腎陰です。従って、卵子を成熟させるのは腎陰です。
◆卵巣は陽が強く、過熱し易い 臓器
卵巣は球形をしています。球形をしているものは陽です。卵巣中の腎陰とバランスを取る為に強い陽なのです。陽が強いだけに腎陰が減少すると陰陽のバランスが崩れ、過熱し易いのです。
◆腎臓が弱ると腎陰が減少し、卵巣が過熱する。すると、<皮様嚢腫>、<成熟嚢胞性奇形腫>が出来る。
腎臓が弱ると腎陰が減少し、卵巣に供給される腎陰も減少します。腎陰が減少すると、卵巣が過熱(温度はさほど上がっていません)します。過熱すると反応が早まります。従って、受精を待てずに、誤って身体の細胞(脂肪のかたまり、毛髪の束、骨、歯など)を部分的に作り始めてしまうのです。
受精していませんから命を作り出す五臓、六腑を作ることは出来ません。これが<皮様嚢腫><成熟嚢胞性奇形腫>の発生メカニズムです。
◆腎臓が更に弱ると、卵巣が<皮様嚢腫><成熟嚢胞性奇形腫>の場合より過熱し、温度が上がり<漿液性嚢腫>が出来る。
卵巣に供給される腎陰が更に減少すると、卵巣が<皮様嚢腫><成熟嚢胞性奇形腫>の場合より過熱し温度が上がります。そこで、止むを得ず、卵巣に水様液を貯めて温度を下げ、炎症を起こすのを防ぐのです。これが<漿液性嚢腫>の発生メカニズムです。
◆ 腎臓が更に弱ると、卵巣の温度が<漿液性嚢腫>の場合より更に上がり<粘液性嚢腫>が出来る。
卵巣に供給される腎陰が更に減少すると、卵巣の温度が<漿液性嚢腫>の場合より更に上がります。そこで、止むを得ず、卵巣により多くの水様液を貯めて温度を下げ、炎症を起こすのを防ごうとするのです。温度が高いので水分を消耗し、水溶液の粘度が高くなり、粘液となるのです。これが<粘液性嚢腫>の発生メカニズムです。
以下、肝臓の弱ると <卵巣嚢腫>が、より出来易くなると言うメカニズムを解説します。
肝臓が弱ると、以下の事が起こります。
◆弱った肝臓が無理に働くと、肝血の温度が上昇する。
鍼灸医学では肝臓は血液の貯蔵タンクとします。大量の血液(肝血と呼びます)を貯蔵します。活動温度は約42度Cと高温です。弱った肝臓が無理に働くと肝陰が減少し、肝陽が亢進します。すると肝臓が過熱し、肝血の温度が上昇します。
◆肝臓の弱りが進行すると、高温になった肝血が全身に供給される。
肝臓の弱りが進行すると、肝血の温度が更に上昇します。そして高温になった肝血が全身に供給されます。
◆高温になった肝血が生殖器とその周囲に蓄積していく。
生殖器は大量の血液を必要とします。従って、血液の影響を強く受けます。高温になった肝血が子宮、卵巣、卵管だけでなく、骨盤内の腹膜、膀胱、直腸、小腸などにも蓄積していきます。
◆高温になった肝血が卵巣に蓄積し、<卵巣嚢腫>が<より出来易くなる >
高温になった 肝血が卵巣に供給されるので、<卵巣嚢腫>が、より発生し易くなる のです。
あとがき
易の陰陽論と鍼灸医学を融合させた【私の鍼灸医学】で腎臓、肝臓の弱りが<卵巣嚢腫>の原因である事を解説しました。腎陰と肝陰の減少により卵巣が過熱し温度が上がるのが原因になっているのです。
腎陰が減少すると、卵巣が過熱してきます。温度はさほど上がっていなくても、過熱すると、反応が早まります。受精を待てずに誤って身体の細胞(脂肪のかたまり、毛髪の束、骨、歯など)を部分的に作り始めてしまうのです。それが<皮様嚢腫>、<成熟嚢胞性奇形腫>です。
卵巣が過熱し温度が上昇すれば<漿液性嚢腫>が、温度が更に上昇すれば<粘液性嚢腫>が出来ます。どちらも、温度を下げて卵巣が炎症を起こすのを防ぐ為に止むを得ず出来るのです。