<女性の不妊症と不育症>その<原因と対策>を易の陰陽論で解説します。
はじめに
<女性の不妊症、不育症(流産、早産)>が急増しています。晩婚化、晩産化の影響も加わり、10組に1組の夫婦が<不妊症、不育症>と言われています。色々な検査しても、特に異常は見つからず、仮に、何か見つけたとしても、それが原因であると特定することが困難であると言われています。
妊娠する為には、まず、(卵管中で)受精しなければなりません。受精出来ない人が増えている為、体外受精(精子と卵子を体外で受精させ、子宮に戻す不妊治療)が急増しています。それに伴い、体外受精で生まれる子供も急増しているのです。
日本に於ける体外受精は1983年に始まり、生まれた子供の累計は43万人を超えました。件数は世界で一番多いと言われており、2004年からは公費助成も始まりました。2014 年には、実に21人に1人が体外受精で生まれているのです。
◆陰陽論とは
陰陽論とは易の基本思想の一つで、人間の生理、病理を理解する上で大変有用です。全ての物に正反対の性質を持った陰と陽があります。全ての物は、陰と陽を調和させることによって成り立っています。陰と陽は互いに引き合い調和しようとします。
一方、陰と陰、陽と陽は互いに反発しあい調和しようとしません。磁石のS極とǸ極をイメージすると分かり易いです。同じ極は反発しあい、異なる極は引き合うのと一緒です。
◆<腎精>が人の<精神>と<肉体>と<エネルギー>のおおもと
鍼灸医学では、<腎臓は精を蔵す>と言います。精を腎臓の中に蓄えているとするのです。それを<腎精>と呼びます。両親から頂いた先天の腎精と、飲食物と大気から作り出される後天の腎精の二つが合わさり、<腎精>が形成されます。その<腎精>が人の<精神>と<肉体>と<エネルギー>のおおもとになるのです。
◆エネルギーに陰陽がある
腎臓が蓄えている<腎精>から、陰のエネルギーの腎陰と、陽のエネルギーの腎陽の二つが生まれます。
・腎陰は、冷却する、鎮める、膨張する、緩む、伸びる、取り込む、物質(細胞など)を生み出す、副交感神経を活性化する、などの陰の性質があります。
・腎陽は、加熱する、活発にする、収縮する、縮む、排出する、交感神経を活性化する、などの陽の性質があります。
◆内臓は腎陰と腎陽から供給される陰気と陽気で働く。
◆弱った肝臓が無理に働くと、肝血の温度が上昇する。
鍼灸医学では肝臓は血液の貯蔵タンクとします。大量の血液(肝血と呼びます)を貯蔵します。活動温度は約42度Cと高温です。弱った肝臓が無理に働くと肝臓の陰気が減少し、陰過少、陽過多となります。すると肝臓が過熱し、肝血の温度が上昇します。
腎臓と肝臓が同時に弱ると、以下の様になります。
◆高温になった肝血が卵巣、卵管、子宮に供給され、陰過少、陽過多になる。
腎臓と肝臓が同時に弱ると、肝陰が更に減少します。すると、肝血が更に高温になり、卵巣、卵管、子宮が更に陰過少、陽過多となります。
◆物質 (細胞)を生み出すのは陰気の働き。卵巣、卵管、子宮が陰過少、陽過多となると、下記のような困ったことが起こる。
・卵巣では
卵巣が陰過少、陽過多となり、温度が上昇すれば<漿液性嚢腫>が、更に温度が上昇すれば<粘液性嚢腫>が出来ます。どちらも、水液を嚢腫の中にため込み、卵巣の温度を下げる為に出来る卵巣嚢腫です。卵巣が炎症を起こすのを防ぐ為、止むを得ず出来るのです。このような卵巣の状態では、健康な卵子は育たないのです。詳しくは下記ブログを参照して頂くと分かり易いです。
・卵管では
卵管が陰過少、陽過多となると、受精の障害になります。受精しても受精卵の細胞が未成熟な状態で短時間に八分割に細胞分裂してしまい、健康な受精卵(桑実胚)が育たなくなります。
卵管が陰過少、陽過多となると、卵管がうっ血、膨張します。すると卵管の内腔が狭窄、閉塞し、<卵管狭窄と閉塞>が起こります。健康な受精卵(桑実胚)が育たなくなります。詳しくは下記ブログを参照して頂くと分かり易いです。
・子宮では
◆牛、豚、羊、鶏、乳製品を過剰摂取すると、含まれている脂肪が 卵巣、卵管、子宮に蓄積し、流動性を失い、固まる。
脂は陰性です。陰過少、陽過多になった内臓と親和性があります。人の体温よりも高い体温の動物の脂は、人の体の中に入ると、流動性を失い、固まります。牛は約 2℃、豚、羊は約3℃、鶏は 約6℃、 それぞれ人より高い体温を持っています。従って、これらの動物の脂は、陰過少、陽過多になった卵巣、卵管、子宮の細胞に蓄積し、終いには、流動性を失い、固まるのです。そして、下記のような困ったことが起こります。
・卵管では
陰性の脂が陰過少、陽過多になった卵管に蓄積し、<卵管狭窄と閉塞>が起こります。牛、豚、羊、鶏の脂は、卵管に蓄積し、流動性を失い、内腔で固まるのです。受精と受精卵の成長の障害になります。詳しくは下記ブログを参照して頂くと分かり易いです。
・子宮では
あとがき
肝臓と腎臓が弱ると、卵巣、卵管、子宮が陰過少、陽過多となり、卵胞の生育、排卵、受精、受精卵の(桑実胚から胚盤胞への)生育、子宮内膜への着床(妊娠)、胎児の成長に様々な障害が起こり<女性の不妊症と不育症>の原因になっていることを解説しました。
牛、豚、羊、鶏、乳製品を過剰摂取すると、含まれている脂肪が 卵巣、卵管、子宮に蓄積し、流動性を失い、固まります。それが様々な障害を生み、<女性の不妊症と不育症>のもう一つの原因になっていることを解説しました。
少子化の今の日本では、全くの死語になってしまいましたが、昭和二十年代までの日本には<貧乏人の子沢山>と言う格言がありました。戦前の日本は、多くの人が貧乏で、五、六人の子供がいることが珍しくありませんでした。困る程、子供に恵まれたのです。一方、少数のお金持ちは、どういう訳か、<子供が少なくて困っていました>。この不思議な現象を言葉で表現したのが<貧乏人の子沢山>と言う格言なのです。
腎臓、肝臓を弱くする原因は、ストレス、過労、睡眠不足、食事など、色々有ります。中でも、とりわけ、食事の影響は大きなものがあります。戦前の日本の貧乏人とお金持ちの食事の一番大きな違いは、ひと言で言えば、<貧乏人は粗食>で<お金持ちは美食>だったと言うことです。
粗食と美食の一番の違いは、タンパク質、脂肪、野菜の摂り方にあります。粗食は動物性タンパク質と脂肪が少なく、野菜が多い、一方、美食は動物性タンパク質と脂肪が多く、野菜が少ないと言うことです。
<女性の不妊症と不育症>
動物性タンパク質と脂肪を摂り過ぎて、野菜が少ないと、腎臓、肝臓を弱めます。特に牛、豚、鶏などの動物性タンパク質の摂りずぎは腎臓を弱め、脂肪の摂り過ぎは肝臓を弱めます。野菜が少ないと体質全体を弱めます。<程よい粗食が強い体質を作る>のです。
今の日本人の一般的な食事は 、戦前の日本の、お金持ち以上の美食になっています。栄養が足りていないから<不妊症と不育症>なのだと思いこみ、肉類や乳製品を更に多く摂取している人が多くいます。従って、(子育てが大変になったとは言え)今の日本には<子沢山>がほとんどいなくなり、逆に、色々な婦人科系疾患が増えてしまったのです。
戦前はほとんど使われなかった農薬や、食品添加物などの化学物質も体内に入ってきますから、それらの悪影響も決して無視することは出来ないでしょう。